
ガスミュージアムブログ
収蔵資料を紹介します。【その20】
日本の夏を代表する花として親しまれている朝顔(アサガオ)は、奈良時代に中国(唐)や朝鮮半島(百済)
から薬草として伝来し、主に薬草園で栽培されていました。江戸時代からは観賞用としても広く親しまれる
ようになり、日本の風景や文化に深く根ざした植物となっています。
朝の涼しい時間帯に開花し、日が高くなるとしぼむアサガオは、手をかけることで毎朝次々と美しい花を咲か
せてくれます。
夏の風物詩としての観賞はもちろん、近年では「グリーンカーテン」や学校での教材としても人気です。
品種や栽培方法によって、花の色や形、葉の模様にいたるまで多様なバリエーションが存在します。特に江戸
時代には園芸文化が発展し、文化・文政期(1804~30)と嘉永・安政期(1848~60)には、「変化朝顔」が
武士から庶民まで熱狂的に流行しました。また、明治20年代にも再び大きなブームが巻き起こりました。
今回ご紹介するのは、明治時代に活躍した浮世絵師・楊洲周延(ようしゅう ちかのぶ)の代表作の一つ、
『東風俗福つくし』シリーズの「ふくりん」という作品です。
本シリーズは「福寿草」や「ふくろう」など、「福(ふく)」という語を含む題材を集め、明治22〜23年
(1889〜90)頃に出版されました。
「ふくりん」は漢字で「覆輪」と書き、アサガオの葉や花びらの縁(ふち)に、地の色とは異なる色が入る
模様を指します。江戸時代から続く栽培ブームの中で、こうした珍しい紋様は「福」を呼ぶものとして珍重
されました。
描かれているのは、夏の朝、店先でアサガオの鉢植えを選ぶ女性の姿です。背後の棚には「朝がほ 丸新」と
記された幟(のぼり)が見えます。さいたま市大宮盆栽美術館の公式サイト等でも紹介されている通り、
これは当時、朝顔園と盆栽園を兼業していた入谷の植木屋「丸新」の庭の様子を描いたものです。
その後、大正2年(1913)を最後に入谷から植木屋は姿を消してしまいましたが、戦後の昭和23年(1948)に
地元有志や観光協会の尽力により「入谷朝顔まつり(朝顔市)」として復活を遂げました。
現在も入谷鬼子母神(真源寺)を中心に、例年7月6日から8日の3日間開催されています。
今年の開催はすでに終了していますが、来年の7月6日から8日にかけて、江戸の風情を今に伝える入谷の
アサガオを愛でに足を運んでみてはいかがでしょうか。
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