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東京の街 ~くらべる探検隊~  第2回 「高輪」探訪

テーマ:     公開日:2021年05月03日

世界的にも珍しい、150年前の鉄道遺構を見に行こう!

今回は、再開発で大きく変貌を遂げつつある港区高輪の探訪です。

   高輪ゲートウェイ駅を発着する山手線と京浜東北線

明治の文明開化の時期、日本の近代産業遺構といえば、世界遺産にもなった富岡製糸場(明治5年(1872年)10月4日(新暦11月4日)操業開始)が有名ですね。
でも実は、東京の都心の「高輪」で、世界的にもとても貴重なもうひとつの日本の近代産業遺構が、間近に眺められるのです!知っていましたか?
   歌川広重(三代)東京高輪海岸蒸気車鉄道図(部分)


それは、富岡製糸場の開業と同じ年、明治5年(1872年)9月12日(新暦10月14日)に開通した、日本初の鉄道の線路軌道の築堤です。
蒸気機関車で新橋と横浜を結んだ鉄道は、まさに日本の文明開化の象徴です。線路の多くは、当時の海岸線に沿ったルートで建設されており、新橋と品川の間の約2.7㎞は、なんと、海の浅瀬を埋め立てて線路を通しています。
当時、高輪付近は軍用地があり、陸地に線路を通すことが認められなかったため、海上を通さざるを得なかったようです。

和と洋が融合した日本の近代化の真髄がみえる

しかし、日本の石積み技術とイギリスの土木技術をうまく融合させて、海に石垣を築き、見事に築堤を建設しています。しかも、建設開始からわずか2年ほどで、このような大工事を完成させているのは驚きです。
当時、鉄道の海上軌道は世界的にも珍しく、まさに日本の産業近代化の足跡を今に残す、大変貴重な遺構です。

高輪の築堤は、当時の錦絵にも沢山描かれています。
陸側を通る東海道を、多くの人や馬車が行きかうなか、沖合の築堤を、黒煙をなびかせて走り抜ける蒸気機関車。まさに江戸と明治が融合した文明開化当時の情景が浮かあがっています。

明治期の有名な版画家小林清親が描いた「高輪牛町朧月景」の錦絵は、月夜の波打ち際を疾走する、蒸気機関車の迫力ある描写が印象的です。
      小林清親 高輪牛町朧月景

  線路移設前の軌道を走る京浜東北線(2015年8月撮影)

高輪一帯の海岸は、その後埋め立てられたため、すでに築堤は残っていないのでは、とも考えられていましたが、令和元年(2019年)に品川駅改良工事の際に石垣の一部が見つかり、その後、高輪ゲートウェイ駅付近の再開発用地からも見つかりました。
上の写真は、平成27年(2015年)に撮影した、京浜東北線の線路です。再開発で線路を海側に移設する前の写真ですので、まさに、この下に築堤が埋まっていました。

発掘された高輪築堤の陸側部分(2021年4月撮影)
 明治32年の築堤拡幅時に建造した石垣がみえる

高輪ゲートウェイ駅がおすすめのビューポイント

近未来の東京の玄関口を期して、令和2年(2020年)に開業した「高輪ゲートウェイ駅」の駅舎3階のデッキからは、発掘された築堤が一望できます。

品川駅の北側から田町駅に向かって広がる再開発の敷地の西寄り、高輪ゲートウェイと反対側の国道15号線沿いに、発掘された築堤がつながっているのが見えます。ちょっと遠いので、望遠鏡があると、石垣の様子などはっきりとみることができますよ。

再開発が進んでビルが建ち始めると、もう一望することはできなくなるので、まさに今が絶好のチャンスです。

高輪ゲートウェイ駅は、明治時代は海だった場所に建っていますので、築堤の海側を望む形になります。石垣の海側は、緩やかな傾斜になっていて波を和らげる工夫がされているのが見てとれます。

高輪は、江戸の南の玄関口

高輪に来たらぜひ足を延ばしてみたい、江戸時代の残り香を感じられる場所があります。そのひとつが、「高輪大木戸跡」です。
江戸時代の江戸の南の玄関口として、旧東海道の両側に石垣を築き、大木戸を夜間は閉めて通行止めとして、治安維持と交通規制を行っていたところです。現在は片方の石垣が残されています。

まさに高輪が、江戸の南を固める玄関口だったことがわかる貴重な史跡です。
高輪大木戸跡は、国道15号線を高輪ゲートウェイ駅から田町駅方向へ少し北上すると、東側の歩道際にありますよ。

そして、江戸時代の歴史を語る、高輪で有名なもうひとつの場所が「泉岳寺」です。
忠臣蔵で有名な、赤穂浪士の墓所があることで有名です。

四十七士の墓所は、当時は高輪の海が一望できた、小高い丘にあります。四十七士は、遠く赤穂に思いをはせながら、今も高輪の地に眠っています。

江戸から明治、そして令和へと、高輪は、時代をこえて東京のゲートウェイなのですね。
ぜひ往時に思いをめぐらせながら、街を探検してみてください。

くらべる探検隊、次回はどこの街に出没するでしょうか。
どうぞお楽しみに♪

(くらべる探検隊2号 Y.A)

 

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