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収蔵資料を紹介します。【その3】

テーマ:     公開日:2025年06月17日

陽光や夜間の光や影の微妙な変化が版画で表現された、現在では「光線画」と呼ばれる小林清親が手がけた作品たちは、弟子の井上安治をはじめ、同時期の絵師たちに影響をあたえました。
中でも井上安治は師の画風を受け継ぎ、明治13年(1880)に17歳でデビューをはたします。
今回紹介する作品「浅草橋雨中之景」は安治デビュー翌年の明治14年(1881)に手がけた、代表作の一つに挙げることが出来る作品になります。

浅草橋雨中之景
井上安治 明治14年(1881)


日本橋から浅草寺へ向かう道筋にある浅草橋は、明治時代になっても人の往来が多く、明治8年(1875)には浅草橋を渡ってガス管が延伸され、浅草寺までガス灯が建てられました。暮れなずむ通りには、ほのかな黄色い光のガス燈がともりはじめ、やがて訪れる夜のとばりのなか、街を明るく照らす近代のあかりの様が醸し出されています。
雨中の風景を描いた大判の作品では、地面の水たまりにガス燈や提灯の明かりを、異なる色の光が落ちる様子として描きわけ、情緒のある夕暮れの雨の光景を表現しています。

東京真画名所図解 浅草橋夕暮
井上安治 明治14~22年(1881~89)

一方、ほぼ同じ構図のハガキサイズの作品では、晴れた日の夕暮れ時に、木々や高い建物が薄暮にかすんでいく様が、淡い色調で描かれています。

作品の奥へと伸びる通りは、浅草橋南脇から東に延びる柳原通りを眺めた風景が描かれています。当時は浅草橋脇からのびる柳橋通りは、浅草橋から秋葉原、神田を結ぶ主要な通りでした。
江戸時代より通り沿いには古着屋が並び、作品の描かれた明治14年(1881)には、100軒余りの店舗で賑わいを見せておりました。やがて古着から繊維製品を扱う問屋街へと姿を変え、現在では年2回の「岩本町・東神田ファミリーバザール」が催されて、街の歴史の流れを感じることが出来ます。
どうぞ展示作品から、140年以上前のガス燈が照らす雨の夕暮れ風景をご覧に頂ければと思います。

 

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