お湯のある暮らし
暮らしの中で暖かいお湯がいつでも使えると心が和みます。
薪や炭を使ってかまどで沸かしていたお湯が、ガスに火をつけるだけでさっと沸かせる。
給湯器なら蛇口からそのままお湯が出てくる。
湯沸器も、初期の重厚長大で装飾的なタイプから、小型軽量タイプへとコンパクト化が進み、
同時に安全性も追求されてきました。風呂釜もまた同様に進化しました。
それぞれの機器の進化が、現代の総合給湯設備へと繋がっています。
お湯のある暮らしのはじまり
ガス風呂とガス湯沸器が登場したのは明治の終わり頃。1904年(明治37)のカタログでも紹介されています。
薪や炭を使って沸かすこれまでのお風呂に比べて、簡単に火をつけることができ、沸きあがりも早いなどのメリットがありました。
また、これまで冷たい水で我慢していた手洗いや食器洗いなども、湯沸器のおかげで温かいお湯が利用できるようになりました。
しかし、当時のガス風呂とガス湯沸器は庶民には手の届かない品物でした。
湯沸器、給湯器、風呂釜の違い
お湯を使う場所でお湯を作るのが「湯沸器」。代表的な例が台所などに設置する小型湯沸器です。
一方、離れた場所でお湯を作り、配管を通じて使う場所に届けるのが「給湯器」。
浴槽の隣に設置し、お風呂を沸かすのが「風呂釜」。壁を挟んで屋外に設置できるタイプもあります。
他にも、風呂釜に給湯の機能がついて離れた場所でも設置できるようになった「風呂給湯器」もあります。

湯沸器

給湯器

風呂釜
ガス風呂の普及
大正時代まで大きな変化がなかったガス風呂とガス湯沸器でしたが、1931年(昭和6)に早沸釜が発売されると、ガス風呂の普及に一役買いました。
昭和30年代に入ると日本住宅公団をはじめ、民間も風呂付きの集合住宅の建築を進めていきました。
その後、マンションブームはさらに進み、手作りの木風呂では間に合わず、量産可能なポリバスにシフトしていきました。
バランス風呂釜の登場
公団住宅をはじめ気密性の高い一般住宅が普及するにつれ、より一層換気に注意を払うことが必要となりました。
1965年(昭和40)にこの対策として開発されたのが「バランス型風呂釜(BF式:Balanced Flue)」です。その特徴は給気口と換気口を屋外の同位置に設置し、器具を密閉して直接屋外と換気する仕組みで、不完全燃焼防止に効果絶大でした。
その後、強制給排気式のFF機器(Forced Draft Balanced Flue)が登場し、安全性はさらに高まりました。
小型湯沸器の登場で生活が便利に
戦前の湯沸器はまだ値段が高かったため、病院や理髪室などで主に利用されていました。 1965年(昭和40)に小型湯沸器が登場してから、一般の家庭にも広まっていきました。
1983年(昭和58)には不完全燃焼防止装置が搭載された機器が発売。安全機能の他に、押ボタン式の点火装置やレバー式のワンタッチ給湯、シャワーノズルの標準搭載など、さまざまな便利な機能が採用されました。
より便利な浴室に
1967年(昭和42)になると、上がり湯・シャワー機能がついた風呂釜が登場。家庭でもシャワーができると喜ばれました。
1976年(昭和51)には、浴室内にあった風呂釜を外に出して浴槽幅を拡大し、ゆったりした入浴を楽しむようになりました。
その後も給湯機能や追い炊き機能が搭載された風呂釜が発売され、より便利になっていきました。
また、昭和50年代後半になると昭和40年代に設置された風呂釜の買い換え需要が多くなり、1983年(昭和58)には設置場所を柔軟に選べる風呂給湯器が登場、普及していきました。

昭和50年頃のお風呂
セントラルヒーティングの拡がり
昭和50年頃には、1つの熱源装置で作った熱を給湯や暖房として使う「セントラルヒーティング」が拡がっていきました。
1976年(昭和51)には、ガスで作ったお湯を給湯、床暖房、浴室暖房など住まい全体で使う「東京ガス温水システム(TES:Thin & Easy (Economical)System 現在はTOKYOGAS ECO SYSTEMの略)」と呼ばれるシステムが発売されました。
昭和50年代後半からエレクトロニクス制御の導入によって全自動風呂機能をTESに追加、給湯能力を向上するなど時代のニーズに対応していきました。

当時のポスター広告
環境にやさしく、より便利に
人々の暮らしには欠かせないものになっていった給湯器。
その後も環境意識の高まりに合わせ、エネルギーの消費効率を向上させた機器を発売しました。
2001年(平成13)には従来の給湯器より高い熱効率を実現し、省エネ・CO2削減に貢献する潜熱回収型給湯器を発売。翌年には、業界全体で「エコジョーズ」という名称を採用し、省エネ化を推進しました。
2009年(平成21)には都市ガスからお湯と電気を作る家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」を発売しました。
効率性だけでなく地球環境に配慮した機器が、人々のお湯のある暮らしを支えています。

エコジョーズ

エネファーム
ガスのある暮らしを支えるガスメーターの歴史
目に見えないガスを量る「ガスメーター」。決まった容量の仕切り(室)の中にガスをみたし、排出する方法を繰り返して量ります。
最初はすべて輸入品でしたが、1904年(明治37)に国内でも製造されるようになりました。ガスメーターは、現在ではガスを量るだけでなく、異常なガス漏れや震度5程度の揺れを感知すると自動的にガスを止める安全機能を備えた「マイコンメーター」が普及しています。

B型ガスメーター
【昭和34年】

N型ガスメーター
【昭和51年】

NI型ガスメーター
【平成13年】
洗面用ガス湯沸器
明治後期 [温水器具・ガス湯沸器]
No.Yuwakashi-002
本体下部のバーナーで上部の鉄のフィンを加熱し、その間に配置したパイプに水を流し、温められたお湯を使用する湯沸器。1904年(明治37)のカタログに同型の製品が掲載されており、洗面所に設置する湯沸器と紹介されている。
0号早沸風呂釜
昭和初期 [温水器具・ガス風呂釜]
No.Hurogama-001
1931年(昭和6)に開発された風呂釜で、木製の風呂桶に組み込んで使用した。それまでの風呂釜に比べ、効率よくガスの燃焼熱で風呂のお湯を沸かし、以後、バランス型風呂釜が登場するまで主力製品となった。
バランス型風呂釜
1975年(昭和50) [温水器具・ガス風呂釜]
No.Hurogama-002
1965年(昭和40)に開発された風呂釜の後継機。密閉された製品内に水を引きこみ、吸気と排気を外気で行い、浴室内の空気を利用することなくガスの炎でお湯を沸かした。不完全燃焼が起きず安全な風呂釜として全国の公団住宅で採用された。内風呂の普及と後に採用されたシャワー機能は、生活に大きな変化をもたらした。
ハンフレー湯沸器
昭和初期 [温水器具・ガス湯沸器]
No.Yuwakashi-007
鋳物製の重厚なつくりの大型湯沸器。下の扉の中にあるバーナーで、上の扉内にある、銅製のらせん管内を通る水を加熱してお湯を沸かしている。ホテルやビルなどの人が多く集まる場所で使用されていた。
富士1号湯沸器
1934年(昭和9) [温水器具・ガス湯沸器]
No.Yuwakashi-004
銅製の円筒型の形状をした湯沸器で、内部は二重円筒の隙間に下部より水が入り、上部の熱交換器部で下部に設置したガスバーナーの燃焼熱で水が暖められ、溝を伝って上部から蛇口へお湯を導く構造になっている。本体は銅板をはんだ付けして作る手作り製品であった。
KG-A4号湯沸器
1965年(昭和40) [温水器具・ガス湯沸器]
No.Yuwakashi-006
初めて圧電式自動点火装置を備えた湯沸器。湯沸器のパイロットツマミと圧電式自動点火装置が連動しており、操作に間違えがなく点火しやすい構造になった。
不完全燃焼防止装置付ガス小型湯沸器
1983年(昭和58) [温水器具・ガス湯沸器]
No.Yuwakashi-009
5号の給湯能力がある、不完全燃焼装置が搭載された最初の小型湯沸器。押しボタン式の点火装置やレバー式のワンタッチ給湯、シャワーノズルの標準搭載など、さまざまな機能が採用されている。