快適な暮らしを支えたガスストーブ
昔は火鉢を使い、炭を燃やした小さな火で寒さをしのいでいました。
ガスストーブの登場により、人々は簡単・安全に暖を取れるようになりました。
今では、ガスファンヒーターや床暖房などで部屋を暖めて快適に過ごせるようになりました。
ガスストーブの登場
1900年頃(明治30年代)になると熱源としてガスの炎が使われるようになります。
当時使用されていた薪や炭に比べ、マッチを擦るだけで点火、ガス栓を閉じることで残り火による火災の心配がいらない、煙やすすがないガスストーブは「安全、清潔な暖房」でした。
しかし、当時のガスストーブはほとんどが輸入品で、ごく限られた階層の家庭でしか使われませんでした。
国産品の発売
大正初期には国産のストーブが発売されました。
その後も日本人技術者の研究開発により、少しずつ国産品が登場。そのデザインからは技術者たちのユーモアや気持ちの余裕のようなものを感じることができます。
大正時代から第二次大戦後しばらくの間は、こうした輻射式のストーブがガス暖房器具の主流でした。
さまざまな暖房器具の登場
昭和30年代になると長年人々に親しまれてきたスケルトンガスストーブに変わる製品が登場します。
1958年(昭和33)には「ガス赤外線ストーブ」が発売。赤外線ストーブのメリットは、ガスの燃焼エネルギーをスケルトンストーブに比べ、効率よく赤外線に変えることができ、より暖かさを得られる製品でした。
また、昭和30〜40年代にかけて集合住宅の建築が進むと、住宅の気密化によって換気の観点から安全により注意を払う必要が出てきました。
1970年(昭和45)には、壁に吸排気管を設置する「ガスFF暖房機(Forced Flue)」が発売。燃焼に必要な吸気とその排気を強制的に屋外でまかなう温風暖房機器でした。

ガスFF暖房機
【昭和45年】
ガスエアコンの発売
1973年(昭和48)には、冷房機能を兼備したガスFF暖房機がガスエアコンとして発売。1988年(昭和63)には「TOKIO」という名称で都会風イメージで広告を展開しました。 1991年(平成3)には、室内の冷え過ぎを湿度を下げることによって快適空調にする「アメニティドライ機能」が搭載され、新時代のエアコンとして活躍することになりました。
進化するファンヒーター
1980年(昭和55)には「ガスファンヒーター」が登場。立ち消え安全装置と不完全燃焼防止装置を備えた安全性で好評を博しました。
その後、ガスストーブの主流として燃費も向上し、軽量・コンパクトに。カラーバリエーションやおしゃれなデザイン 、さらに空気清浄機能を搭載した製品も登場し、更に進化し続けています。
時代にあわせて進化してきたガス栓の歴史
ストーブやコンロなどのガス器具を利用する際、欠かすことのできないガス栓。
ガス栓は明治の頃はガス灯用として、大正初期には現在の用途に合ったガス栓が揃っていました。
昭和初期にはすでに安全に使えるようさまざまな工夫がされ、現在ではガス器具を接続しないとガスが出ないガス栓が一般的になっています。
以前は「ガスカラン」「ガスコック」などの名称でも呼ばれていましたが、1992年(平成4)より「ガス栓」の名称で統一されました。

ガスコック
【昭和2年】

ストップカラン
【昭和34年】

ガスコンセント
【平成2年】
英国フレッチャラッセル社製裸火ガスストーブ
明治後期 [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-002
魚火型の裸火による、大変古い形をしたイギリス製ガスストーブ。暖をとるとともに、ガラス越しに炎の様子を視覚的に楽しむこともできた。
英国製OJストーブ
1912年(大正元) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-008
イギリス製の鋳鉄製ホーロー引きのストーブ。上部のカバーを取り外すことで、配置してあるコンロを使用することが出来る。
英国製サロンストーブ
1912年(大正元) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-004
薪を使用した暖炉を、ガスストーブに改造するときなどに設置された。暖炉の中に設置してもデザイン的に釣り合うよう、大きく重厚な形をしたイギリス製のストーブ。
燻竹製ガス火鉢
1914年(大正3) [暖房器具・ガス火鉢]
No.Hibachi-001
1914年(大正3)にガス会社より独立した元社員が開発・デザインした製品。国産オリジナルデザインのガス暖房器具で、年代や制作者などが分かる初期の資料である。
16号Aストーブ
1927年(昭和2) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-016
国産オリジナルデザインのストーブで、アルミの地肌をいかした外観に、新しく開発した角型のスケルトン(耐火粘土製)を使用するストーブ。この後登場する国産ガスストーブに大きな影響を与えた。
17号OS蟹型ストーブ
1937年(昭和12) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-014
日本製のストーブ。中の角型スケルトン(耐火粘土製)がガスの炎で熱せられて赤くなるところから、蟹の形を連想した当時の技術者のユーモラスが感じられるデザインをしている。
30号赤外線ストーブ
1959年(昭和34) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-019
ガスの炎を特殊なセラミックバーナー(シュバンクバーナー)を使用して燃やすことで、それまでのスケルトンを使用するストーブに比べ、2倍の赤外線を利用することができた。赤外線を利用して暖めるため風の影響を受けず、天井吊り下げ式の暖房器具としても利用された。
20号ガスターウルトラレイストーブ
1966年(昭和41) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-020
赤外線ストーブの一種。一番表面の金網と二枚目の金網の間でガスを燃やし、網を赤化させて暖めていた。圧電式の自動点火装置が備わっているが、マッチなどで点火する際は、表面金網の開口部にマッチを差込み、点火することもできた。
25号ガスファンヒーター
1980年 (昭和55) [暖房器具・ガスストーブ]
No.Stove-021
ガスの燃焼熱を、内蔵したファンで室内全体に循環させて暖めるガスファンヒーターの第1号機。燃焼熱をそのまま利用するが、不完全燃焼装置をはじめとしたさまざまな安全機能が搭載されている。その後ガス暖房器具は、ファンヒーターが製品の中心となっていった。